2012年、当時はまだボロだった東女寮。
天下の東女の寮がまさかこんなボロだとはと
実家の道場と比べつつもやはり驚きを隠せない千鶴。
そして、この時がメアリ、ぽひとの初めての出会いでした。
その翌日、「新人耐久テスト」と称される走り込みが行われ
たった10分で脱落するぽひを見て「だらしない」と思う千鶴。
そしてメアリも1時間もたない有様。
しかし、10分しかもたなかったぽひも2時間粘った千鶴も
先輩達からみれば所詮同じ「新人」に過ぎず
技術には自信のあった千鶴も
持久力という点においては天と地ほどの差を見せつけられ
現実を知った3人は「弱い者同士」で身を寄せ合う事に。
大抵は同期といえど、いや同期だからこそ
どこかで反目し合ったり、お互いを蹴落とし合ったりするもの。
しかし、この3人にはそういった事が一切ありませんでした。
道場に縛られて同世代の友達がいなかった千鶴。
天涯孤独の身だったメアリ。
戸籍すらなかったぽひ。
境遇は違えど、語り合える友達がいなかったからこそ
ある意味初めての友達だったからこそ、
お互いを大切に思えたのではないかと。
そして、3人は東女のリングでデビュー。
格闘経験のない2人に対して、
古武術の下積みがある千鶴が突出した実力を誇るのは当然の事。
しかし、施設に保護されたり、そこから逃げ出したりしてきたメアリ。
別の国の出来事なのでは?と思いたくなるほど凄惨な過去を過ごしてきたぽひ。
そんな彼女達に比べれば、自分は環境に恵まれてきただけではないのか?
もし、自分が彼女達のような生い立ちであったなら・・・
今の彼女達のように果たして笑えるだろうか?
などと考えると
彼女達の強さは「まだ見えないところにある」。
2人はきっと強くなる。
千鶴はそう思うのでした。
だから、これからも3人で東女を盛り上げていこうと思っていたのに
それが突然終わりを迎えようとは、思いもよらなかったのです。
ナイトメアがFWWWへ移籍することとなり、
その一員であるぽひも当然一緒に移る事に。
「プロレスを続けていれば、どこかのリングで戦えます」
そう言い残してFWWWへ行ってしまったぽひ。
しかし、ぽひがいなくなってしまい
狭いはずの二畳一間が思いのほか広く感じてしまう2人。
そんな、寂しい気持ちをごまかすための冗談交じりの軽口。
「次に会った時は私達より強くなっているかも?」
当時のぽひの実力を考えれば、
それを本気にとる人はおそらく誰もいなかったでしょう。
しかし・・・
2年後、その冗談は冗談ではなくなります。
神崎に弟子入りしたぽひはメキメキと力を付け
ついには千鶴を打ち負かすほどに。
そんなぽひとは逆に、追い求める理想との距離に焦りを感じるメアリ。
今のままじゃ夢が叶えられない、と。
そんなメアリが叶えたい夢とは・・・
3人でヤングドラゴン杯決勝トーナメントまで上がって
3人の誰かで優勝を競い合いたいというものでした。
その夢のために、2人に早く追いつこうと切磋琢磨するわけですが・・・
健闘及ばず、メアリは予選でかんきちに敗北。
ぽひと千鶴は決勝トーナメントでの直接対決を実現して
一人、置いていかれた感のあるメアリ。
それでも2人の前では明るく振る舞うのですが
人知れず、悔し涙を流していたのでした。
そんな彼女に
焦る必要はないんですよと
いつまでも待っていますからと
そう伝えたかった1年前。
そして・・・
時は今。
優勝候補、本命としての実力を見せつけた千鶴。
しかしそれを獅子の刃が断ち切る!!
渾身のライオンカッターによってついに千鶴が沈む。
メアリ、念願のヤングドラゴン杯優勝!
どちらが勝ったのかわからないくらい表情を崩したまま
千鶴を凄い力で抱きしめるメアリ。
そう、メアリは今回
「3人でヤングドラゴン杯決勝トーナメント進出」
「3人の誰かで優勝を競い合う」
という自分の夢を叶え、
ぽひ、千鶴の両名から白星を挙げて
ヤングドラゴンの称号を獲得したのでした。
その後、優勝トロフィーを
前回優勝者であるぽひが手渡すという粋な演出を行ってから
決勝トーナメントに出た8人で記念撮影。
久しぶりにリングの上で3人揃う事が出来たのでした。
こうして、3人の若手としての時間は終わりを迎えます。
しかし、レスラーとしての道のりはまだ始まったばかり。
これからも3人で
時にはタッグパートナーとして
時には対戦相手として
共に切磋琢磨していくことでしょう。
そしていつの日か・・・